正月とは、一年の最初の日の朝である元旦に、歳神(としがみ)・歳徳神(としとくしん)を迎え、年内の家族の健康や安全、安泰を願う行事です。歳神(としがみ)は先祖霊とか農業の神と見る向きがありますが、その年を守り、福をもたらしてくれる、ありがたい神様と考えればよいでしょう。
●床の間(とこのま)=歳神が家に滞在している期間が正月です。鎮座しているのは神棚ですが、多くの家庭が床の間を臨時の歳神棚としています。住宅事情などで床の間などが無い場合は、非日常的な場所を床の間と見なせばOKです。
●神棚(かみだな)=正月の間、歳神が鎮座する場所を歳神棚と呼びます。注連縄(しめなわ)を新しく張り替えて、通常の神棚を臨時の歳神棚へと模様替えします。正月の神棚は、歳棚(としだな)、歳徳棚(としとくだな)とも呼ばれます。
●恵方(えほう)=吉方ともいい。その年の縁起の良い方角。いわゆるラッキーな方向です。歳神はその年の恵方(えほう)の彼方から、やって来るといわれているので、恵方に向かって歳神棚を作ります。
恵方に向かって設けた歳神棚を恵方棚とも呼びます。恵方は別名「あきの方」ともいい、恵方信仰は江戸時代に広がったといわれています。恵方棚を設けて、恵方に向い、★若水を汲んで供え、★柏手を打つという作法を家族で行います。
★若水(わかみず)=その年に井戸から汲む最初の水で一年の邪気を祓う、ありがたい水とされています。
しかし、最近では、井戸を備えている家庭は限られているので、情緒には欠けますが、ライフラインの一つということで、水道蛇口附近などに簡易な注連縄などを飾ります。
★柏手(かしわで)=神を拝むときに両手の平を打ち鳴らすこと。手の平を少しズラして打つと、いい音がでます。
●注連縄(しめなわ)=原始宗教の感覚に近く、古くは山岳信仰で山には神が存在すると考えられていました。注連縄に★紙垂を垂らし、神がいるとされる山の常緑樹★(榊)と一緒に飾ります。注連縄で囲まれた内部は、神域であり、歳神が鎮座する印で★結界を示しています。
本来は、家や建物全体をぐるりと縄で囲むところを簡素化して、一ケ所に飾ることで、全体に連なっていることを示しています。「注連」の文字に、その意味が感じ取れます。注連縄に稲ワラが使用されるのは、日本が★瑞穂の国だからです。
★神垂(しで)=白い和紙を切って作る神祭用具の一つ。語呂から、紙は神に通じるとして、白は清浄をあらわしています。
★榊(さかき)=比較的、温暖な地方の山林に生えるツバキ科の常緑小高木
★結界(けっかい)=仏教で定めてある境界
★瑞穂(みずほ)=よく実った穂、日本の美称
●門松(かどまつ)=門松は、降臨する歳神が道に迷わぬための目印です。「神様が道に迷う」というのもおかしな話しですが。
古くから「松」などの常緑樹を飾り、鎌倉時代頃から「竹」も添えるようになりました。松は千歳を契り、竹は万代を契るという諺(ことわざ)があるように、門松には、神の宿る場所・依代(よりしろ)が永遠に続くようにと言う願いが込められています。
関東地方などでは、切り口が水平の寸胴切りの真竹3本をワラや竹で巻き、家の前に飾ります。竹の切り口を斜めにカットするのは、商店や商人の店や家の門松です。京都地方では、松飾りは根引き松が一般的です。奉書を巻き、紅白や金銀の水引で結んだ一対を玄関などに掛けたり、飾ったりします。
●三方(さんぼう、さんぽう)=神道の神事において使われる、★神饌を載せるための台。古代には、高貴な人物に物を献上する際にも使用されていたそうです。寺院でも同様のものが使われますが、(仏・法・僧)にかけて三宝(さんぽう)と書かれることもあります。
★神饌(しんせん)=神に供える食べ物。通常は「ひのき」などの白木による木製で、折敷(おしき)と呼ばれる盆の下に、直方体状の台(胴)がついた形をしています。台の三方向に穴があいていることから、「三方」と呼ばれています。
元々は折敷と台は分離していて、使用時に台の上に折敷を載せたり、台には載せずに、折敷だけ別に使用することもあったようです。今日では折敷と台が完全に結合したものが使用されており、折敷だけで使用するものは三方とは別に用意するようになっています。
折敷には縁の板を留めるための綴り目(継ぎ目)があるが、これは穴のない側の反対側になるように作られています。つまりは、神前に供える際は、穴のない側(綴り目の反対側)を神前に向くようにします。神饌が載った三方を持つときは、親指を左右の縁に、その他の指を折敷と台に当て、目の高さに持ちます。
●鏡餅(かがみもち)=神に供える食べ物で、鏡餅が丸餅なのは、古来の丸い青銅鏡を表現しています。鏡は三種の神器の一つであり、神体でもあり、鏡餅自体に神が宿ると解釈され、「鏡餅=おかがみ」と呼ばれています。
鏡餅に裏白、ゆずり葉、橙、昆布、串柿、伊勢エビ、金扇などを豪華絢爛に飾ります。一見、悪趣味的ですが、豊かな食料を蓄えるという願いがこめられています。地方、地域により習慣が異なるので、飾る内容に正確なものはありません。
橙(だいだい)=柑橘類は不老長寿の実といわれ、また語呂合わせから、家系が代々(だいだい)続くようにと繁栄の願いもこめられています。
裏白(うらじろ)=穂長ともいわれ、長寿の象徴を表しています。葉の裏側の白を見せて敷きます。白は清浄を表し、心に裏がないことを示しています。
昆布(こんぶ)=よろこぶに通じる縁起物です。「子生婦」とも書き、子孫繁栄を表し、別名の「夷子布・えびすめ」が恵比寿様につながるので、めでたさの象徴ともいわれています。
ゆずり葉=親子草ともいわれています。古い葉と新しい葉の入れ替わりが目立つので、次の世代に譲るということから名づけられ、子孫繁栄を意味しています。
●鏡開き(かがみびらき)=鏡餅を下げる日。全国的に一月十一日を「鏡開き」としています。これは江戸時代に武家の鏡開きが、この日に行われたのが由来です。鏡餅を切らずに割り、雑煮や汁粉にして食べます。「切る」という言葉は、腹を切る、切腹につながるので避けられていました。因習めいてはいますが、古くから鏡餅は神の食べ物とされており、神と同じモノを食べることにより、連帯意識を得たものと思われます。
